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マリン船長が眼帯を外さなくなった話

2023-10-27 来源:百合文库

マリン船長が眼帯を外さなくなった話


―ある日の船内―
「船長最近眼帯外さなくなったよな。」
「そういえばずっと着けてる気がする。」
「前まで『眼帯を着ける意味を教えてもらいたい』とかぶつぶつ言ってたのに。」
「ものもらいでも出来たんかね?」
「いやそれだったら俺らに『助けて君たち〜』って言うだろ」
「まぁ確かに」
 1ヶ月程前、とある宝があるという島から帰って来てから船長が眼帯を外さなくなった。
島に向かったのは船長と宝鐘海賊団の一味数名。
帰ってきた一味によると、その島には他の海賊団も来ており、かなりの激戦だったと話していた。
負傷者も多く、直接こちらの船には帰って来ず、1週間ほど港町で治療した後に帰ってきたのだ。
重傷者は今でも港町で治療を受けている。
 船長がなぜ眼帯を外さなくなったのか帰ってきた一味に聞いても頑なに答えようとしない。
他の一味の間では「ものもらいだろう」とか「戦いの時に怪我をして治療中なんじゃないか?」とか色んな憶測が飛び交っていた。
―数日後―
「君たち~ちょっと来てほしいんだけどー。」

マリン船長が眼帯を外さなくなった話


船長室からマリン船長の呼ぶ声が聞こえてくる。
「おいおいまたマリン船長が呼んでるぞ。」
「お前行ってこいよ、この前も呼ばれてただろ。」
「いやいや、この前呼ばれたとき、『ちょっとこの紐結んでくれない?』ってしょーもない雑用させられたんだ。俺は行かん。」
「紐結ぶのなんか一人で出来るのに構ってちゃんの時期が来たのか?」
「そういえば最近の船長よく扉とかにぶつかってるよな。」
「ああ、今朝も船長室に入ろうとして半開きのドアにぶつかってたな。」
「あれは眼帯で見えないからぶつかったんだろ。」
「あの島から帰ってきてから2週間位経つけど、未だに外そうとしないの何か気になる。」
「同行したあいつらも頑なに喋ろうとしないしなにかあるのは確かだ。」
「よし、ちょっと調べてみるか。」
 そうして船長がなぜ眼帯を外さないのか調べることになった。
マリン船長本人に聞いてもしらを切るのでまずは港町で治療中の仲間を訪ねることにした。
―港町診療所―
「おう、怪我の方は良くなったか?」
俺は療養中の仲間から話を聞くために港町の診療所に来ていた。

マリン船長が眼帯を外さなくなった話


「まだ立つことは出来ないがだいぶ良くなったよ。この調子なら1ヶ月以内には出れるだろうと医者が言ってた。」
「それはよかった。あの島での戦いの凄さは帰ってきた仲間に聞いたぞ。」
「島に上陸するまでは良かったんだがな、まさか3組の海賊団が争ってる最中だとは思わなかった。」
「マリン船長の指示で見つからずに宝の場所まで行けたんだが、船に戻るときに見つかってしまってな。」
「船長が意地でも宝を渡したくないって言うもんだから俺らが盾になる形で先に船まで戻らせたんだ。」
そこまでは帰ってきた一味から話を聞いていた。
「そこで一つ聞きたいことがあるんだが。」
「ん?なんだ?」
「あの島から帰ってきて以来、マリン船長が頑なに眼帯を外そうとしないんだ。」
「島から帰ってきたあいつらに聞いても絶対喋ろうとしないからなにかあるんじゃないかと思ってな。」
「ああ、その話か。」
聞かれることを知っていたかのような返事だった。
「なにか知ってるのか?」
「正直に言えば知ってる。だが、マリン船長から口止めされているんだ。」

マリン船長が眼帯を外さなくなった話


「やっぱりか。そんな誰にも言えないことなのか?」
「気軽に言えることではないな。口止めされるレベルだぞ。」
「まぁそりゃそうか。」
「でもいずれバレることになる。あのまま隠し切るのは無理がある。」
「お前がマリン船長に船員全員に眼帯を外さない理由を喋るように説得するというなら教えてもいい。」
「それはなかなか迷う提案だな。あのマリン船長を説得しろと?」
「このことは早めに全員に言ったほうがいいと言ったんだが、嫌だと駄々をこねられたんだ。」
「相変わらず子供っぽいところがあるんだよな。まぁいいだろう説得してみせるぞ。」
 俺は説得する難しさよりも眼帯を外さない理由を知りたいという欲が勝ってしまった。
そして療養中の仲間から全てを聞かされた俺はマリン船長を説得するために宝鐘海賊団の船に戻るのであった。
―宝鐘海賊団海賊船 船長室―
 あれから少し調べ物をした後、マリン船長を説得するために船長室へ向かった。
 「マリン船長、眼帯を外さない理由を教えて下さい。」
「だから言ってるじゃないですかーちょっとした事情があって外せないんですよ。」

マリン船長が眼帯を外さなくなった話


「君たちもしつこいですねぇ。」
何回言っても話す気はないようだった。
俺は勇気を出してあることを言った。
「船長、その眼帯の下、義眼ですよね?」
それを聞いたマリン船長は少し沈黙した後、口を開いた。
「誰からそれを聞いたんですか。」
「港町の診療所にいる仲間です。とあることを条件に全て話を聞きました。」
「船長、船員全員に全てを話してください。このまま隠していてもいずれバレますよ。」
「扉にぶつかったり、紐が結べたなかったり、それなのに眼帯を外さないのは不自然ですよ。」
「この事を話して君たち一味は船長のこと失望したりしないですか?」
このとき俺はこの言葉の真の意味をまだ理解していなかった。
「海賊の片眼が義眼なんてよくあることです。確かに驚いて倒れる奴が出るかもしれないですが。」
「そうですか。正直、船長もいずれ話さないといけないとは思ってました。」
「分かりました。全て話しましょう。3時間後、一味を全員集めてください。」
「了解しました。」
 俺はマリン船長を説得することに成功した。

マリン船長が眼帯を外さなくなった話


そして3時間後、船員全員に集合をかけた。
―海賊船 船内―
 マリン船長に言われたとおり全員に招集をかけた。
集まってから数分後、マリン船長と何故かネクロマンサーのるしあちゃんも一緒に出てきた。
何故るしあちゃんがいるのかそのときはまだ分からなかった。
 「君たち、急に集まってもらったのは他でもないこの眼帯のことです。」
「あの島から帰ってきてから眼帯を外さないと君たちは思っていたでしょう。」
「まどろっこしいことは抜きにして単刀直入に言います。」
「実は船長片眼が無くなってしまったんだわ。」
そう言うと船長は眼帯を外した。
眼の色は同じだが左眼が動いているのに右眼は動いていない。
俺も話は聞いたが実際に見るのは初めてで、本当だったのだと少し驚いた。
「こうして片眼が義眼になってしまったのは船長自身に責任があります。」
「そしてなぜここにるしあがいるのか、全て話します。」
 船長は少し深呼吸した後、事の発端を話し始めた。
「まず、船長と一味の数名があの島に宝を取りに行ったのは知っていると思うんだけど。」

マリン船長が眼帯を外さなくなった話


「宝を持って船に向かう最中に他の海賊団に見つかって船長が船に真っ先に向かったんだわ。」
「そのとき一味が応戦したりしてなんとか行けそうだったと思った瞬間、記憶がなくなったの。」
俺は聞かされた話と船長の話に違いがあることに気がついた。
診療所にいた仲間からは「船長は横からきた敵の攻撃を避けれず眼を失った。」と聞かされた。
その違和感が気になりつつも話に集中した。
「ここからはるしあが話てくれるから。」
船長はそう言ってるしあちゃんにバトンタッチした。
 「どうも潤羽るしあです。一味のみなさんこんにちは。」
「マリンがあの島に行ってる頃、るしあは自宅でネクロマンサーの勉強をしていて。」
「一度休憩をしようとリビングでゆっくりしていたとき、ドンドンドン!と扉をたたく音がしたのです。」
「騒がしいなぁと思いつつ扉を開けるとそこには見慣れた海賊の服を着た男の人達が数名いて。」
「男の人達は必死の形相で『船長が!マリン船長が!!』と言ってたのを覚えているのです。」
「またマリンのいたずらに一味の人達が付き合わされてるのかとおもったんだけど、マリンの姿を見てこれはいたずらではないと分かったの。」

マリン船長が眼帯を外さなくなった話


「一味の人達が運んできたマリンは息をしていなかった。」
「心臓を拳銃か何かで貫かれてそこだけ穴が空いてたのです。」
俺はその話を聞いていてなにかの冗談かと思っていた。
だって聞いてた話と全然違うじゃないか!
叫びたい気持ちを抑えてるしあちゃんの話を聞いた。
 「そのときの一味の人達は軽い錯乱状態でまともに話を出来る状態じゃなかった。」
「とにかく落ち着いて話をしてもらうために、るしあはマリンの状態を見つつ一味の人達にははるしあの家で待ってもらったの。」
「数十分してようやく落ち着いたようだったので話を聞いてみたら、逃げてる最中に流れ弾に当たったのだと。」
「最小限の船員しかいなかったから医療班もいなくてどうしようもできなかったらしいのです。」
「マリン船長がたまに冗談交じりで『船長が死んだらるしあに生き返らせてもらうから大丈夫大丈夫。』と言っていたからるしあの家に来たと言われたんです。」
「るしあの今の知識で死人を生き返らせることは出来たんだけど、どうしても身体の一部が必要だったのです。」
「一味の人達は凄く悩んでた。耳は歌えなくなるから駄目、手足は駄目、そうなると眼しかないとるしあは提案したのです。」

マリン船長が眼帯を外さなくなった話


「絵を描くのが大好きな船長から片眼を奪うのかと、かなり悩んでた。」
「それから1時間ぐらい経って一味の人達が『眼帯を着けていた右眼で』と涙声で言っていたのを今でも忘れないのです。」
俺はもう考えるのをやめていた。
診療所のあいつは何故俺に嘘をついたのか。
考えてる暇もなく次の話に集中した。
 「ここから船長が話します。」
「起きた船長に開口一番一味達が言った言葉が『ごめんなさい』だったの。」
「俺達が船長を守りきればこんなことにはならなかったのだと。」
「謝りたいのは船長の方だった。一味を盾にしてお宝を優先したのだから。」
「義眼になったことを知らされたときも少し悲しかったけど、片眼一つで生き返ったのならいいでしょ。」
「これが船長が眼帯を外さなかった理由です。」
「君たち一味に話さなかったのは『大切な君たちよりも目の前のお宝を優先した』という事実がどうしても許せなくて、
話す勇気が出なかったんです。ごめんなさい。」
その事実を聞いてマリン船長を避難する仲間は一人もいなかった。
なぜなら俺たちは『宝鐘マリン』に惚れてこの宝鐘海賊団に入ったんだ。

マリン船長が眼帯を外さなくなった話


カッコイイ船長も可愛い船長もドジな船長もそしてお宝に目がくらむ船長も好きなんだから。
 後に診療所から戻った仲間に何故嘘をついたのか聞いたところ、
「もしどうしても話したくなったらそう言いなさい」とマリン船長に言われたらしい。
 あれからマリン船長は相変わらずドアにぶつかったり階段を踏み外しそうになったりと危なっかしいが、
日々のリハビリのおかげで片眼が見えないのも段々慣れてきて今ではお絵かきも普通にできるようになった。
 『眼帯を外さない宝鐘マリン』は今日もお宝を求めて一味と共に船を進めるのであった。


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