第8话 我的老哥不可能这么帅

第8話　私の兄貴がこんなにカッコイイわけない
第8话 我的老哥不可能这么帅
已经是第二周了啊……时间过得真快啊
现在是星期日的早上
我在自家的起居室里吃着些自制的三明治
在回到这个世界的初夜里、不管怎样就是对睡眠有点恐惧
因为害怕着在第二天迎接清晨的时候、这不可思议的仿佛梦幻般的过去到底会不会消失
但是即使在次日的梦醒时分、这份梦幻也没有消失
然后我就像往常一样日复一日的度过着家和学校的两点一线的日常――不知不觉已经两周了
（但是紫条院同学到底怎么了呢。在我送她回家的那天过后虽然我们还是按照以前的样子进行对话……但是偶尔紫条院同学会流露出好像害羞般的表情）
如果这是恋爱喜剧的话那么这一幕一定是对我有好感的场景吧、但是这是不可能的

只是因为她对谁都会爽朗且平易近人地所以导致我误解了、像我这样的人应该还只是有名字的路人角色般的存在吧
（嘿嘿……『这绝对是对我有意思！』我已经和经常怀抱着这种童贞妄想而偷笑的高中时代的我不一样了。不脚踏实地每天赚取好感度可不行）
「啊……老哥」
「哦、早上好香奈子」
突然回过头去、我的妹妹――香奈子就站在那里
留着一副只有年幼少女才被允许的双马尾的中学二年级、虽然长相很可爱但是说话方式有点神经大条
前世因为母亲过度担心我而突然与世长辞所以对我心存芥蒂、似乎讨厌起我来、不断和我疏远的存在
「午饭不是还没好吗？　我做了三明治所以就吃那个吧。现在我去给你泡杯红茶」
「…………」
为了不知道为何摆出一副费解的表情且缄默不语的妹妹、我站了起来去厨房泡茶

向留有余温的杯子里加入热水让茶叶完全冲泡（茶叶在被子里上下浮动）、即使是便宜的茶叶在遵守了这样基本的准则后红茶的色泽和醇香也会很好。
「给、紅茶。……为什么摆出那副难看的脸色。三明治不合你胃口吗？」
回到起居室后香奈子巴库巴库地把三明治吃了个精光、但是不知道为何摆出一副一脸疑问的表情。
「…………好奇怪」
「奇怪？　你到底哪里不满意呢？　是鸡蛋三明治里放了芥末黄油？　还是和风洋葱培根三明治里胡椒放太多了？」
「奇怪的不是三明治而是老哥你！！」
妹妹仿忍受不住了盛大地叫了起来。
「到底怎么回事！？　这美味的三明治和香气四溢的红茶算什么！　其他代替妈妈作的土豆炖牛肉啊、咖喱啊、汉堡牛肉饼啊、不管哪个都好吃的要死！　完全不能理解啊！？」
「不是、就是想试着稍微作下料理」

在我开始一个人生活不久后、想着过上健康的生活于是就试着开始自己料理了、没想到意外的挺有趣的、于是料理就被拔高成为了我爱好领域的一部分
但是因为社畜的繁重工作花去了太多时间、爱好自然而然地就断绝了、自那之后我就开始了为期十年以上的靠着下馆子和便利店便当过活的日子、这也是我的健康每况愈下的原因之一
但是回到了像这样能自由支配时间的高中时代的我、夹杂着替母亲减轻负担的念头又开始了料理。
「这可不是稍微做一下的级别了！　再加上变得会自己洗晒衣服、打扫家里的卫生、每天对着桌子好好学习……！　到底怎么回事！？　你吃了什么奇怪的东西吗！？」
被狠狠的说了一番、但这全部基本上都是为了母亲
因为我发过要努力让原本无比担心我而早早离世的母亲笑着生活下去的誓言了
而这个计划的初步就是帮忙料理和家务、从而让母亲感到开心、学习自然除了为了自己之外、也有不让母亲担心我的未来的成分在里面

（拥有大人精神力的现在即使是学习也很快乐……）
总觉得所谓的人类大概就是长大后知道了学习的重要性后的学习欲望才会上升、过去十分讨厌的学习如今也感觉挺有意思的
不管怎么说学的越多就对自己的人生越有好处
解题的过程也感觉有点像玩游戏一样、一不小心就注入热情了
「乱蓬蓬的头发和眉毛也好好地整理了起来！　结果早上甚至开始了晨跑！回过神来声音已经变得干脆利落、阴暗死宅的模样也消失了……！是掉到哪个湖里然后和完美的老哥交换了吗！？」
（你掉的是这个金色的欧尼酱还是银色的欧尼酱）
这种强烈diss哥哥的发言游行还请千万马上停止
再说注重仪容仪表可是社会人的必须事项啊、妹妹
如果身上带有不洁感的话女性社员的态度就会非常敷衍、也会被顾客公司的社员看不起、结果就是导致被上司发怒的次数增加了

所以如果没有把这作为最低限去好好打扮的话、就更赤身裸体上战场一样让人冷静不下来
「バカ兄貴がまた漫画に影響されて何かやってるなって思ってたら、もう二週間もその生まれ変わったみたいなスタイルが崩れないし！　気持ち悪いからどういうことかいい加減説明してよ！」
「还想着笨蛋老哥肯定又是被漫画影响了想着去做些什么、但是已经两周了、那种重生般的状态却还是没有崩坏！　感觉很恶心啊！、到底是怎么回事请好好说明一下」
健康かつ未来が綺麗なままで残っている高校生の身体にはしゃいでしまい、つい色々と熱を入れてしまったが……確かに妹から見たら俺の変貌ぶりは気持ち悪いというレベルではないだろう。
因为回到了这副仍完美保留着健康和未来的身体、不禁有点活力过剩、一不小心就过于努力了……确实从妹妹看来我的变化还没有到恶心的这个级别。

（我感觉这里说的是到达了恶心的级别 但是原文
却说没有到达 我也晕了可能我理解有问题 把原文放这了有错请指正）
但是要怎么办呢……如果老实回答像「我是从未来来的」这类的话、感觉妹妹反而会认真的把救护车叫过来的
「那个……实际上。我、有喜欢的人了」
「诶……」
「我一直憧憬着那个人…但是因为发生了许多事、现在无论如何都想和她变成恋人。但是以前那个阴暗胆小的、学习和运动都不行的我是配不上那个人的」
不知道是否话题会往这方面发展超出了香奈子的预先、她只是惊讶地咽着口水听着我的话。
「所以、我下定决心想要改变。仪容仪表也好、学习也好、运动也好、我都想好好去做、从以前那个阴暗叽叽咕咕的人自我变革成我开朗、说话爽快的人、为了发掘身而为人的自己的内涵我想把自己磨练成家务也好、料理也好、什么都能做好的人」

「啊、诶……那种事是……认真的吗？　认真中的认真吗老哥？」
「很认真。以前的我是不会受欢迎的。所以我想去变成能受欢迎的我」
「～～～～～～～～っ！　了不起！　真的了不起啊老哥！」
。
对话结束后、香奈子的眼睛一闪一闪地闪烁着光辉尊敬起我来
「那个老哥！　那个跟混蛋一样的阴沉老哥居然会说出这种话！
为了喜欢的女孩去改变自己在我心里真的超级得分的！　不对、爱情的力量还真是伟大呢！」
「跟混蛋一样阴沉……」
「嗯、真的是好事啊！　我、以前一直认为老哥你只会过着一辈子宅在房间里一边看轻小说啊、动漫啊、一边欸嘿嘿傻笑这样的人生！」
「我可是真的要生气了喂！？」
发出嘈杂的声音后我才注意到、说起来能算得上社畜生活的唯一乐趣的就是宅在家里看轻小说、动漫、打游戏啊、香奈子的预想完全灵验了啊

……悲しいなぁ。
……真是可悲啊
「所以、老哥你看上的是怎么样的人呢？　美女？　辣妹？　运动少女？　老哥喜欢的巨乳类型怎么样——我也有这样想过！」
像个中学生一般对恋爱的话题津津有味的妹妹怀抱着一丝兴奋的样子问起了我喜欢的人的事情
嘛、本来也没想隐藏起来。既然你想知道的话那哥哥我就尽情的告诉你吧、香奈子。
「啊、那我就告诉你吧。那个人是我的同班同学。名字是――」
于是我把我尽我所能把能回想起来的紫条院同学的魅力全部告诉了妹妹……但是才20分钟妹妹就到达极限了
「啊——！　够了！　够——了！　我已经知道老哥你有多喜欢那个人了！　真是的、说起喜欢的东西时就变得健谈起来这点和以前比起来真是一点没变啊！」
「我还没说够呢……嘛、但是现在你知道紫条院同学究竟是一个多么完美的人了吗？」

「说起来那人到底是什么情况……美女、胸部又大、又是个有钱的大小姐、对谁都是平易近人的说话的温柔天然的人……？　真的存在吗这种人？　这不是仿佛妄想具体话般的人吗」
「确实冷静分析的话听起来就像我是个极端妄想的人……。嘛、那么我就让你看下实际上到底是个什么样的人吧」
面对因为紫条院同学那超出寻常的优点而开始怀疑其存在的妹妹、我没有办法只好回到房间去拿班级的集体合照出来
那个在前世的不久后我会存入手机的照片、我在回到过去之际在死亡的深渊里看到的东西
「哇……真的有啊。哇……这是什么？非常好看、胸也非常大……在加上看上去纯真无邪的破坏级别的笑顔……」
「啊、很可爱吧。这就是紫条院同学哦」
「为什么老哥你这样洋洋自得啊……。但是如果是这样的美女的话、岂不是每天都会收到告白变得跟夏日祭那样热闹？真的没有男朋友吗？」

「啊、因为紫条院同学在学校的男生中人气太高了、好像有谁想去告白的话就会被周围的人给妨碍。在加上因为本人过于天然所以别人投向她的灼热视线全部都没被注意到
「诶……这算什么……想告白的人就让他去告白不就好了。定下这种默许的协定来妨碍鼓起勇气告白的人真的是恶心死了」
「真是辛辣啊。嘛、虽然确实是这种傻瓜式的默然协定、但与其说是大家都在遵守这个协定不如说是听到这件事后却没有人来打破这种禁止偷跑的氛围才对」
「但是……那样的话如果老哥想要告白的话不是就会被周围的懦弱男生们妨碍不是吗」
「正是这样。但是、这样没有关系」
对紫条院同学告白的时候不仅需要抓住好感度赚取足够时的「决胜时机」、周围的竞争对手也可能会来妨碍我
但是我已经不再是那个会因为这种程度而害怕的纤细的我了

但是只要有这份寄宿在我内心近乎疯狂的『后悔』、那我就是无敌的
「把可能会有人来妨碍的这类的想法全部吹飞然后告白。我已经不再是那个只会静静等着女主角从天而降的自己了……我只是单纯为了胜利前行而已」
像我这样的死宅只是在梦想着。
梦想着突然发生从天而降、转生异世界、在上学路上的拐角、这类和美少女邂逅的事件然后自己的波澜不惊的日常发生突然发生转变的白日梦罢了
但是我等了30年了别说紫条院同学了、通过突发事件而邂逅的女孩一个都没有
我已经意识到无论我在怎么等下去都是徒劳的
「老哥你说的好啊！　真的对你刮目相看了！」
蓦然回首的话就会发现香奈子十分兴奋
甚至可以看到有一丝感动的痕迹
「能断言到这地步的真的太厉害了！　老哥你告白的话绝对会成功的！　因为现在的老哥真的非常的帅！」

「香奈子……」
即使是在前世这家伙也是凭借着天生的那份可爱和沟通能力作为和我完全相反的阳角闪闪发光
所以这家伙内心里对我的评价一直是『阴暗不起眼的哥哥』、随着年龄的增加我们之间的对话渐渐的越来越少
「加油老哥！　我十分为你应援！」
这样的香奈子居然评价我很帅并且从心底里为我应援。
这份事实就是――我感觉仿佛重新入手了一件原本我不该丢失的物品、一不小心就感动得热泪盈眶
「啊、我会加油的！　等到变成了女朋友后我会把她带到家里来的！」
「啊哈哈哈っ！　就是这个气势就是这个气势！　Fight老哥！」
就这样假日的正午就这样过去了
和在前世十分讨厌我的香奈子一边进行着各种类型的话题、一边相视而笑、就这样我们一起悠闲地度过了如图宝石般的时光

以下为原文
第8話　私の兄貴がこんなにカッコイイわけない
「もう二週間か……早いもんだな」
時は日曜日の昼間。
　俺は自宅の居間でお手製のサンドイッチをつまんでいた。
過去の世界に来た最初の夜は、とにかく眠るのが怖かった。
　朝を迎えればこのありえない過去世界という夢から覚めるのではないかと思えたからだ。
しかし次の日に目が覚めてもこの夢は終わらなかった。
そうして俺はかつてのように学校と家を往復する日々を送り――早二週間になる。
（しかし紫条院さんはどうしたんだろうな。あの家まで送った日以降もいつもの感じで話してくれるけど……ふとした時になんか照れたような顔を見せるんだよな）
ラブコメならそれは俺を意識しているというサインだが、それはありえない。

　彼女は誰にでも優しくて気さくだから誤解してしまいそうになるが、俺なんてまだまだ名前付きモブくらいの扱いのはずだ。
（ふふ……『これは俺に気がある！』なんて童貞にありがちな妄想でニヤけた高校時代の俺とは違うんだ。焦らず毎日好感度を稼がないとな）　
「あ……兄貴」
「お、おはよう香奈子」
ふと顔を向けると、俺の妹――香奈子が立っていた。
幼さの残る少女にしか許されないツインテール頭の中学二年生で、とても可愛い顔立ちのわりに言葉遣いはやや雑だ。
前世では俺を心配しすぎた母さんが急死したことで俺を嫌うようになり、どんどん疎遠になってしまった存在だ。
「昼飯まだだろ？　サンドイッチ作ったから食えよ。今紅茶淹れてやるから」
「…………」
何故か難しい顔をして黙り込む妹のために席を立ち、台所で紅茶を淹れる。

　しっかり茶葉をジャンピングさせて、お湯で温めたカップへ注ぐという基本を守ると安い紅茶でも色と香りがとても良くなる。
「ほれ、紅茶だ。……ってなんだその難しい顔は。不味かったか？」
居間に戻ると香奈子はサンドイッチをバクバクと平らげていたが、何故かやたら疑念に満ちたような顔になっていた。
「…………おかしい」
「おかしい？　なんだ何か気に入らなかったのか？　玉子サンドに辛子バター使ったとこか？　和風オニオンベーコンサンドが胡椒多めなとこか？」
「おかしいのはサンドイッチじゃなくて兄貴だよっっ！！」
妹は我慢に耐えかねたように盛大に叫んだ。
「一体何がどうなってんの！？　何この美味しいサンドイッチに香りのいい紅茶！　他にもママの代わりに肉じゃがとかカレーとかハンバーグとかガンガン作ってどれもこれも凄く美味しいし！　意味わかんないんですけど！？」

「いや、ちょっと料理でもしてみようかなって」
俺はかつて一人暮らしを始めた直後、ちゃんとした生活を送ろうと自炊を始めてみたのだが、それが意外と楽しくて趣味の領域まで高まっていた。
しかし社畜の超ハードワークでそんな時間のかかる趣味は自然と途絶え、それ以降は十年以上も外食やコンビニ弁当になってしまい、俺の健康がボロボロになっていく一因となった。
だがこうして自由に時間が使える高校時代に戻った俺は、母さんの負担を減らす意味もあって料理を再開したのだ。
「ちょっと作ったってレベルじゃないし！　おまけに洗濯物は自主的に洗って干すわ、家の掃除はするわ、毎日机に向かって勉強するわ……！　一体なんなの！？　変なもんでも食べた！？」
さんざんな言われようだが、その全てはほぼ母さんのためだ。

俺は散々心配して死なせてしまった母さんが笑って生きられるように努力すると誓ったのだ。
その初歩が料理や家事を手伝って楽をさせてやることであり、勉強はもちろん自分のためでもあるが母さんに俺の将来を心配させないためでもある。
（大人の精神の今なら勉強が楽しいしなぁ……）
どうも人間とは大人になって学びの重要性がわかってからのほうが学習意欲が上がるらしく、昔は大嫌いだった勉強も今はなかなかに面白い。
なにせ学べば学ぶほど自分の人生のプラスになるのだ。
　問題を解くのも何だかゲームのようでつい熱が入ってしまう。
「ボサボサだった頭も眉もしっかり整えて！　しまいには早朝にランニングまで始める！　気がつけば声がハキハキになって陰気オタクの面影が消えてるし……！　どっかの湖に落っこちて綺麗な兄貴に交換されたの！？」

仮にも兄に激ディスり発言のオンパレードやめろ。
そもそも身だしなみはマジで社会人に必須なんだ妹よ。
不潔感があると女性社員の態度がひどくおざなりになるし、取引先の社員からも安く見られて結果的に上司から怒られる回数が増える。
なのでそこを最低限ちゃんとしておかないと、素っ裸で戦場に出ているかのようで落ち着かない身体になってしまったのだ。　
「バカ兄貴がまた漫画に影響されて何かやってるなって思ってたら、もう二週間もその生まれ変わったみたいなスタイルが崩れないし！　気持ち悪いからどういうことかいい加減説明してよ！」
健康かつ未来が綺麗なままで残っている高校生の身体にはしゃいでしまい、つい色々と熱を入れてしまったが……確かに妹から見たら俺の変貌ぶりは気持ち悪いというレベルではないだろう。

しかしどうするか……バカ正直に「俺は未来からやってきたんだ」なんて言おうものなら割と本気で救急車を呼ばれてしまう。
「その……実はな。俺、好きな人がいるんだ」
「え……」
「その人はずっと憧れだったんだけど……色々あって絶対に恋人にしたいと思うようになったんだ。けど今までの暗くてビビりで勉強もスポーツもできない俺じゃとてもその人とは釣り合わない」
香奈子は話がそういう方面に転ぶとは予想外だったのか、ゴクリと唾を飲んで俺の話に聞き入る。
「だから、俺は変わると決めた。身だしなみも勉強もスポーツもしっかりやって、今までの暗くてボソボソ声の俺から明るいハキハキ声の俺に自己変革して、人間として深みを出すために家事でも料理でもなんでもこなせるよう自分を磨いているんだ」

「あ、え……そんな……マジで？　マジ中のマジなの兄貴？」
「大マジだ。今までの俺じゃモテない。だからモテる俺になろうとしてるんだ」
「～～～～～～～～っ！　偉い！　マジ偉いよ兄貴！」
語り終えると、香奈子は目をキラキラと輝かせて俺をリスペクトしてきた。
「あの兄貴が！　あのクソみたいに根暗の兄貴がまさかそんなこと言うなんて！
好きな子のために変わるってマジポイント高いよ兄貴！　いやぁ、ラブの力ってマジ偉大だわー！」
「クソみたいに根暗……」
「うん、マジいいことだよ！　私、兄貴って一生部屋にこもってラノベ読んだりアニメ見たりしてフヒヒ……って笑うだけの人生送るとばかり思ってたもん！」
「しまいにゃキレるぞオイ！？」
声を荒げてから気付いたが、そう言えば社畜生活の唯一の楽しみと言えば自宅でのラノベ・アニメ・ゲームだったので、香奈子の予想は完全に的中している。

　……悲しいなぁ。
「で、で、兄貴のお目当てってどんな子なん？　美人？　ギャル？　スポーツ少女？　兄貴好みの巨乳なんだろうなーとは予想つくけど！」
中学生らしく恋愛の話題には興味津々なようで、妹はやや興奮した様子で俺の好きな子のことを聞いてきた。
だがまあ、別に隠すようなことでもない。お前が聞きたいというなら存分に兄貴は語ってやるぞ香奈子。
「ああ、教えてやるよ。その子は俺のクラスメイトでな。名前は――」
そうして俺は妹に紫条院さんの魅力を思いつく限り語ってみせたのだが……たった20分で妹が限界に達した。
「あー！　もういい！　もーいーって！　兄貴がどれだけその人が好きかわかったから！　ああもう、好きなことを語る時はめっちゃ喋るところは以前と変わってないじゃん！」

「まだ語り足りないんだけどな……まあでも紫条院さんがどれだけ素晴らしい人かはわかっただろ？」　
「というか何その人……美人でおっぱいが大きくてお金持ちのお嬢様で、誰にでも気さくに話してくれるほど優しくて天然……？　本当に実在するの？　妄想が具現化したみたいなヒトじゃん」
「確かに冷静に分析したら妄想の塊にしか聞こえないな……。まあいい、なら実際どんな人か見せてやるよ」
紫条院さんのあまりのスペックにその存在すら疑い始めたので、俺は仕方なく自室に戻ってクラスの集合写真を持ってくることになった。
俺が前世において後にスマホに取り込んだ写真で、過去に戻る直前の死の淵で見ていたものだ。
「うっわ……マジいるんだ。うわー……何これめっちゃ美人でめっちゃおっぱい大きい……おまけに凄い純粋っぽい笑顔……」

「ああ、可愛いだろ。それが紫条院さんだ」
「何で兄貴が誇らしげなの……。けどこんなにキレーな人だと告白祭りなんじゃない？　マジで彼氏いないの？」
「ああ、それが学校中の男子に人気すぎて、誰かが告白しようとすると周囲から妨害されるらしい。そして本人が天然すぎて自分に向けられている熱視線に全く気付いていない」
「えぇ……何それ……コクりたい人からコクればいいじゃん。そんな暗黙の協定作って勇気出した人を妨害するなんてクソキモい」
「辛辣だなオイ。まあ、確かにアホな暗黙協定だけど、皆がそれを守っているというより一度できたそういう抜け駆け禁止の雰囲気を誰も壊せなくなってしまったという方が正しいかな」
「でも……それじゃ兄貴も告白しようとしたら周囲の腰抜け男たちから邪魔されるってことじゃん」

「そのとおりだ。けど、そんなの関係ない」
紫条院さんに告白するには本人の好感度を稼いで「勝負時」を見定めるほかにも周囲のライバルたちの邪魔もあるだろう。
しかし、そんなことにビビるような繊細な俺はもういない。
この胸に宿る狂おしいほどの『後悔』がある限り俺のメンタルは無敵だ。
「誰が邪魔してこようがそれを全部吹っ飛ばして告白する。もう俺は空からヒロインが降ってくるのをじっと待ってた俺じゃない……ただ勝ちに行くだけだ」
俺のようなオタク男子は夢想した。
　空から、異世界から、通学路の曲がり角から美少女と突然出会うイベントが起きてこの冴えない日常を変えてくれることを。
しかし30年待ってても紫条院さんはおろか、イベントで遭遇する女の子など一人もいなかったのである。

　いくら俺でもこれもう待ってても無駄じゃんと悟りもする。　
「兄貴よく言った！　マジ見直した！」
　ふと見れば、香奈子がえらく興奮していた。
　なんだかちょっぴり感動しているようにすら見える。
「そこまで言い切れるのはマジすげーよ！　告白したら絶対成功する！　だって今の兄貴マジでカッコイイもん！」
「香奈子……」
　前世においてもこいつは生まれ持った可愛いさとコミュ力で俺とは対極の陽キャとして光り輝いていた。
　だからこそこいつの中で俺への評価は『暗くて冴えない兄』で一貫しており、年齢を重ねるほど会話がなくなっていった。
「頑張ってよ兄貴！　私めっちゃ応援してるから！」
　そんな香奈子が俺をカッコイイと評して、心から応援してくれている。

　その事実に――俺は取りこぼしていたものを一つ手に入れられたような気がして、つい目頭が熱くなってしまった。
「ああ、頑張るさ！　彼女になったら家にも連れてくるからな！」
「あはははっ！　その意気その意気！　ファイトだ兄貴ー！」
　そうして、休日の昼下がりは過ぎていった。
前世において俺を激しく嫌っていた香奈子と、色々な話をしながら笑い合える宝石のような時間がゆっくりと――