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草の親しみ  薄田泣菫 ススキだ キュウキン(2)

2023-08-20 来源:百合文库
 しかし、私の草に対する親しみは、それのみによることではありません。私は子供の頃、草の中で大きくなりました。もっと適切に言ったら、草と一緒に大きくなりました。田舎の寂しい村に生まれ、友達といっても、わずかしか持ったなかった私は、その僅かな友達と遊ぶ折にはいつも草の中を選びました。友達の居合わさない時、一人ぼっちで兎のように草の上を転げ回っていました。草には花が咲き、実がなっていましたら、私はそれと一緒に遊ぶことができました。指に吸い付く朝鮮朝顔の花や、ちょっと触ると、蟋蟀のようにぴちぴち鳴いて、莢を飛び出す酸漿の実などは、子供の私にとって、心からの驚異で
私はどれだけの長い時間を、それによって遊ばせてもらったか知りません。草の中には、またいろんな虫が隠れています。機織り、土蜘蛛、軍人のように尻に剣を持っているキリギリス、長い口髭を生やしたヤキモチ焼きの蟋蟀、気取り屋の蟷螂、剽軽者の屁っ放り虫、螻蛄、蚯蚓、ーといったような、御伽の国の王様や小姓たちの気忙しいそうな、また悠長な生活がそこにあります。こさの葉を掻き分け、茎を押し曲げて、その中に、隠されているこの俳優たちのお芝居を覗き見するほど、私にとって制しきれない誘惑はありませんでした。虫のだんまり、虫の濡場、虫の荒事、虫の所作事、虫の敵討ち、の面白さ。彼らは覗き見をする私に気がつくと、びっくりして動作も思い入れものっちのけに慌てて逃げ出しました。気短なやつは、私の指にくついたり、細い毛脛でもって私の額を蹴飛ばしたりしました。

草の親しみ  薄田泣菫 ススキだ キュウキン


遊ぶものと、遊ばせてくれるものと、成長するものと、成長させてくれるものと。ー私と草の関係は、こうした離れられない間柄だっただけに、今夕立前の野道で、思いがけなく刈り草の匂いを嗅いで、暫くはそこに引き留められたようなわけでした。
 やのような銀線を書いて、大粒な雨がばらばらと落ちてきました。農夫は慌てて刈り草を背負って駆け出しました。私のその後を追いました。


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