《终物语（上）》后记原文摘出与试译(2)

不確かな世の中にも確かなものがあるのだという、それはそれで結構な錯覚を得られるとでもいいましょうか。錯覚と言えば、その場合厄介なのは、忘れているのではなく、記憶違いをしているパターンですかね。つまり自転車の乗り方をマスターしたエピソードを、本人は憶えているつもりでもそれはぜんぜん違うエピソードだったり、ためになる知識を得た本を、別の本と取り違えていたり——ないとは言えませんし、そういったとき、世の中というのは実に不確かなものと相成ります。何が正しくて何が正しくないのか。何が真実で何が真実でないのか。私の記憶は確かならば——という言葉を裏返して、私の言葉は不確かならばと、いちいち確認しなきゃいけない人生というのも、案外悲惨ですが。そんな疑問は忘れちゃった方がいいかもしれませんね。

というわけで本書は物語シリーズ第15弾です。十五冊目。言うまでもなくとっくに西尾維新史上最長のシリーズですが、ここまで来るとも何がなんだが。十五冊って、気軽に人に薦められるシリーズでなくなっちゃってますよね。十五冊の本を読むって、一大事業ですよ。書く側としても、ともすると、気構えてしまって、おいそれと、筆は進みません。というわけで初心に返る意味で、もう一度百パーセント趣味で書きました。趣味で書いたら分量は増えすぎて、分冊になってしまいましたが……、このあたりの自由度も、趣味っぽくていいです。趣があり、味がある。というわけで『終物語（上）』『第一話 おうぎフォーミュラ』『第二話 そだちリドル』『第三話 そだちロスト』でした。
セカンドシリーズでは謎めき続けた忍野扇ちゃんも、ようやくそのベールを脱ぎはじめたわけですが、このたびめでたく表紙を飾ることに。VOFANさん、ありがとうございました。このあと物語は下巻へと続くわけですけれど、上巻と下巻との間に中巻が挟まらないように頑張りたいと思います。